1つ前の記事で速報的に書きましたが、薬害肝炎訴訟、大阪地裁での判決が出ました。
原告13人のうち5人については国と三菱ウェルファーマに賠償を命じ、4人ついては三菱ウェルファーマにのみ賠償を命じる一方で、他の4人の請求を棄却する判決でした。
国と製薬会社の責任を認める、という点では勝訴判決なんだろうけど、感染が昭和60年8月以前とされる原告及び、クリスマシン(第9因子製剤)を感染原因とする原告の訴えは認められなかったので、手放しで大喜びはできず。
新聞等でも報道されていた薬害肝炎訴訟の主な争点は以下でした。
(1)国と製薬会社は血液製剤による感染の危険性をいつから認識できたのか
(2)製剤の有効性
(3)感染との因果関係
本判決では、(1)(2)については、承認の杜撰さや、アメリカでのFDAの報告や承認取消に関連して、(3)は輸血との併用事例という点で顕れていると思われ。
予習そっちのけで判決要旨を読んだので、大まかな内容をまとめてみたり。
(といっても私の理解なので間違ってるかもですが。)
まず、(1)の危険性と(2)の有効性を考えるのに、時系列で分断して判断している模様。
具体的には、①昭和39年の承認、②昭和53年(まで)の再評価手続きのすり抜け、③昭和60年8月の不活化処理方法の変更、④昭和62年4月の加熱フィブリノゲン製剤承認、と大きく4つの時点で裁判所の判断が下されてます。
①昭和39年の承認
○フィブリノゲン製剤の製造承認申請に際して添付された臨床試験資料は杜撰であった。
●当時の有効性審査方法下では、フィブリノゲン製剤の有効性、有用性を認めざるを得ない。
●当時の知見・状況から、国の製造承認は違法とは言えない。
●当時の知見・状況から、ミドリ十字の安全確保には過失はない。
②昭和53年(まで)の再評価手続きのすり抜け
○フィブリノーゲンミドリから、フィブリノゲンミドリに名称変更したことは第一次再評価対象から除外する合理的理由にならない。
○昭和53年までに厚生大臣はフィブリノゲン製剤を第一次再評価指定するべきであった。
○厚生大臣はFDAのフィブリノゲン製剤の製造承認取消という情報の収集検討を怠り、医薬品の安全性確保についての意識が欠如していた。
●当時の肝炎の危険性やDICに関する知見、産科出血の重篤性への認識を考慮すれば、後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲン製剤の有効性・有用性が否定できたかはなお不明。
●後天性低フィブリノゲン血症を適用除外としなかったことは厚生大臣の規制権限不行使が著しく不合理であるとまでは言えず、いまだ違法とまでは言えない。
●ミドリ十字にも安全性確保に関する過失はない。
③昭和60年8月の不活化処理方法の変更
○C型肝炎の危険性やDICに対する知見がかなり集積されていた。
○医療技術の進歩等で参加領域についてフィブリノゲン製剤を必要とする省令は相当減少。
○フィブリノゲン製剤の有効性が疑問視される状況になりつつあった。
○ミドリ十字がフィブリノゲン製剤の不活化処理として変更を加えた紫外線照射等はほとんど不活化効果がなく、C型肝炎感染の危険性を一層高めた。
○ミドリ十字には安全確保義務に違反した過失有。
●厚生大臣はミドリ十字の不活化処理変更を知っていたと認められる証拠はない。
●後天性低フィブリノゲン血症を適用除外としなかった厚生大臣の規制権限不行使は著しく不合理であるとまではいえず、違法とは言えない。
※昭和60年8月以降のミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)の過失認定。
→昭和60年8月~昭和62年4月までに感染した原告は製薬会社に賠償責任。
④昭和62年4月の加熱フィブリノゲン製剤承認
○肝炎の危険性やDICに関する知見はかなり明確になっていた。
○血液用剤再評価調査会がフィブリノゲン製剤の有効性、安全性、有用性に強い疑問をだいていた。
○医学的、薬学的知見に基づく有効性審査方法の下では、フィブリノゲン製剤の有効性は確認できない。
○非加熱製剤につき、肝炎集団感染発生事例の報告があり、同種感染事例が発生する危険性が高い状態だった。
○このような状況下での後天性低フィブリノゲン血症を適用除外としなかった厚生大臣の規制権限不行使は著しく不合理であり違法。
○乾燥加熱処理によってはウィルスの不活化処理は不十分で安全性が何ら確保されていない。
○厚生大臣は十分な調査、検討を行わず、当初から非加熱フィブリノゲン製剤に代えて加熱フィブリノゲン製剤を承認するという結論ありきだった。
○申請からわずか10日で有効性、安全性、有用性を確認しないまま、後天性低フィブリノゲン血症の適用除外のない加熱フィブリノゲン製剤について、承認した。
○このような厚生大臣の承認は安全性確保に対する配慮や認識に著しく欠けており違法。
○ミドリ十字にも、非加熱及び加熱フィブリノゲン製剤の製造、販売につき安全性確保義務に違反した過失有。
※厚生大臣(国)の加熱製剤承認に関して、違法認定。
※ミドリ十字(現三菱ウェルファーマ)の加熱、非加熱製剤の製造販売について過失認定。
→昭和62年4月以降に感染した原告は製薬会社と国の両者に賠償責任肯定。
(3)の因果関係については、国または製薬会社に賠償責任があるとされる昭和60年8月以降にフィブリノゲン製剤の投与を受けた原告についてのみ判断を下し、輸血併用事例を含めて、そのいずれもフィブリノゲン製剤とC型肝炎感染の因果関係をあっさりと肯定しています。
また、判決要旨の最後にはクリスマシン製剤についての判断を示しており、その内容は、
○昭和42年の第9因子複合体製剤(コーナイン)の輸入承認申請は杜撰であった。
○昭和51年の第9因子複合体製剤(クリスマシン)の製造承認申請はコーナインの杜撰さを引き継ぐものであった。
●当時の審査方法の下では、血液凝固第9因子欠乏症疾患の重篤性を考慮すると、クリスマシンの有効性、有用性を否定できるか疑問がある。
●クリスマシンの製造承認、その後の規制権限不行使について厚生大臣に違法はない。
●ミドリ十字にも安全性確保に関する過失はない。
というもの。
(1)国と製薬会社は血液製剤による感染の危険性をいつから認識できたのかという点については、FDAの製造承認取消など、昭和53年までにはフィブリノゲン製剤の危険性が認識できたとしつつ、一方で従来の判例をがっつり踏襲して、権限の不行使も、厚生大臣の裁量内であるか否かを判断、で、その裁量はかなり広く認められるのがお約束のなのか、結局違法とはされず。
行政法の講義を受けると、国相手の訴訟に関して「裁量」の壁が分厚いという話を聞くけど、今回もまさにそれなのだな、と。
個人的には、本当にそこまでの裁量が認められるのか、認めて良いのか、甚だ疑問ですが。
(2)製剤の有効性に関しては、弁護団は「そもそも効かなかった薬」と主張しているのに対し、大阪地裁の判示ではフィブリノゲン製剤の有効性、有用性を昭和60年8月までほぼ一貫して認めているように読めます。
微妙にあいまいな表現ばっかりだけど。
少なくとも有効性を真っ向から否定するのは、昭和62年4月までに血液用剤再評価調査会がフィブリノゲン製剤の有効性に疑問を呈してからのよう。
が。
この有効性の判断では、「産科DICが重篤だから」とか、「血液凝固第9因子欠乏症が重篤だから」とかそういうニュアンスで、そのための薬として必要と行っているような気が・・・。
△△病に△△薬が必要だとされるから、△△薬は△△病に効くんだ・・・って話になってるような。
素朴に疑問なんですが、これって何か変じゃない?
そりゃ、重い緊急性のある病気の場合、薬が必要なのはわかる。
でも、△△病に効くという名前の薬ならそれで良いというわけではなかろうに。
その薬がそもそも効かない薬だったら、その病気が重篤だろうが緊急だろうが、意味ないんだし。
病気の重篤性とその病気のための薬の有用性を絡ませて結論づけているように見えるところがどうしても納得いかないのですよ・・・。
いや、裁判官は私より遙かに優秀だろうから、そんなアホな論理破綻は起こしてないと思うけどさ。
でもやっぱり納得いかない。
誰か説明してくれ。orz
あともう1個どーしても理解できないのが、最初の承認の時点。
資料が杜撰だったけど、当時の審査方法下では有効性は認めざるを得ない、って当時の資料って「投与したら効いた」ってことだけが書かれた1枚のぺろっとした紙じゃなかったっけ?
てことは、当時の審査方法では中身が何だろうが、「投与したら効いた」って書いて出せばそれで何でも有効性が認められたってこと?
そんなんでOKだったら、承認されなかった事例というのは1個もなしになるような。
(もしかして、実際にALL承認だったのかしら?この時代の承認されなかった事例というのを見てみたい気が。)
それでも、そんな杜撰な制度だったということで、承認制度の上では有効性が認められてしまって、承認をパスしたという話なら理解できるんだけど、判決要旨だと「当時の審査方法の下では、フィブリノゲン製剤の有効性、有用性を認めざるを得ない」って、承認をパスしたことで製剤自体の有効性を肯定してしまっているように見えるんだけど・・・。
私の理解が変なのかなぁ・・・。
判決全文出たら読んでみよ。
最初にも書きましたが、上記のまとめは私の理解によるものなので、誤解や曲解がいっぱいあると思います。
行政法はむっちゃ苦手だし、法科大学院生としても劣等生な私なので、内容に責任は持てません(苦笑)。
間違いとかあったら突っ込んでいただけると幸いです。
とりあえず、今日は報道ステーションとニュースJAPANをしっかりチェックすることにします。
今回の判決はB型肝炎訴訟の最高裁判決があまり反映されていないように見えたけど、福岡地裁での判決には反映されて、今回の判決の不当な部分がクリアされることを願います。
8月30日は私も傍聴に行きますです。
ちなみに古賀弁護士のブログによれば、明日明後日と福岡では電話相談や支援要請行動を行うそうです。
□被害110番
6月22日(木)23日(金)
古賀克重法律事務所にて
092-735-1193
5名の弁護士で終日対応。
23日以降は平日常設(同番号)。
□支援者・弁護団・原告による判決勉強会と支援要請行動
6月24日(土)
14時から16時
判決勉強会(福岡市中央区春吉公民館2階講堂)
16時~
署名行動(天神)
私も判決勉強会、行こうかなぁ・・・。